e-BOXERについて調べてみた(3)
2025/08/05
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S:HEV ストロングハイブリッド
- 本レポートも3回目となりますが、今回はS:HEV ストロングハイブリッドを扱います。
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Figure 1: S:HEV用トランスミッション(スバル技報2024より)
- 変速制御の考え方は前回のPHEV(*1)と同じです。PHEVはTHS II第3世代の考え方を取り入れたものでしたが、S:HEVはTHS II第4世代をベースにしているため、MG2とパワースプリットプラネタリのトルク合流を、プラネタリーギアではなく、リダクションギアに変更しています。

Figure 2: S:HEV用トランスミッション
- SUBARU側が持つ設計制約にはいくつかあると思いますが、その一つに「モーターはTHS IIと同じものを使用」があるでしょう。そのためTHS IIの第3世代から第4世代への変更に対応すべく、基本思想は同じでも再設計を余儀なくされる点が多かったのではと考えています。
TOYOTA THS II第3世代→第4世代の違い
- このセクションからAltmoの想像が多くなりますが、TOYOTA THS II の世代差について考えてみました。
- PHEVのベースとなるTHS II第3世代は、エンジンとMG2トルクの合流後、ステップATに近い変速機能のオプショナルな追加を「付加価値」としていたのではと思っています。ラビニヨ方式のプラネタリギアが使われていたのもこの時期でした。
- しかし、プラネタリーギアを多く使うと、スピンロス以外にマルチプレートクラッチの追加によって制御ロスが増えてきます。そのため高出力エンジンを搭載した車で、高速時の挙動そのものを売りできる車種以外には適用が難しいでしょう。
- そうしているうちにモーターの出力が上がってくれば、素直にモーター出力を利用する方式を中心とし、部品数を減らして重量を含めた多くのロスを減らすという考え方が出てきます。これがTHS II第4世代の考え方(*2)ではと想像しています。
SUBARU S:HEVの設計制約
- MG2主体となるTHS IIの世代変更対応を含め、S:HEVの設計制約には下記があったのではと考えています。
- 現行Crosstrekのトランスミッションケースと同じ大きさ
- MG2出力Up+サイズUpの対応
- トルク合流部のリダクションギアへの変更
- 機械式4WD(シンメトリカルAWD)も保持する
- 組み合わせるエンジンも現行Crosstrekから
- まずMG2の高出力化(202[Nm]→270[Nm])に伴い、少し大きくなったMG2をケースに収めるため、リダクションギアへの変更と一緒に、ギア部のサイズを軸方向に26mm減らしています。

Figure 3: ギア部構造の変化(スバル技報2024より)
- そしてトルク合流を司る Secondary reduction と Motor reduction gear は、大きさの異なる歯車を軸共用にした部品のため、研磨にパワーホーニングを採用しているそうです。確かに普通だと小さい歯車に砥石をあてられませんし。

Figure 4: ヘリカルギア写真(https://motor-fan.jp/article/289065より)
- そしてすごいと言うか何と言うか、Figure 4の歯車は軸が中空になっています。Figure 2 の Transfer gearから後輪を駆動するシャフトを通すためです。何かこう...S:HEVの構造的なポイントがこの部品に集まってますね。これも機械式AWDを守ろうとしたからでしょうし、私自身も「機械式4WDであること」はSUBARUの生命線だと思います。
- そして組み合わせているエンジンは、FB25...2500ccのエンジンです。現行のCrosstrekでは北米のラインナップを合わせてもFB20かFB25なので、ここは一択になるでしょう。実際、MG2の効果と合わせて従来FB25よりパワフル(加速感が良い)なことを売りにしています。

Figure 5: 112km→145km加速時間比較(スバル技報2024より)
- 高速道路走行が多い場合、この加速性能は運転しやすさに直結するでしょう。さっと追い越せるのは本当に楽です。
- S:HEVでは、PCU(Power Control Unit)をエンジンルームへ持ってきたことで、ガソリンタンク容量が60リットルへ戻りました。多分これ、HEVオーナーの一番の不満だったのではと想像します。解消されて良かったかなと。
CB18はどうなる?
- CresstrekのPHEVから改良したとすれば、S:HEVのエンジンもFB20→FB25なのは納得ですが、CB18との組み合わせは無かったのかなと考えていました。CB18は通常(スーパーではない)のリーンバーンとしてはλ=2(*3)の「ほぼ限界点」を達成した、高性能/低燃費のエンジンだと思います。
- しかしリーンバーンという特徴のため、通常の三元触媒だけでなくNOxトラップが入っている等(SCR無いだけ良いですが)、EGR環流率の調整に気を使う(*4)分、モーターとの協調はハードルが高かったのかもしれません。
- そして、どちらかと言えばダウンサイジングターボの流れと思われた場合、CrosstrekやForesterのオーナーに刺さりにくく、マーケティングは難しい...。
気になることが一点
- HEVを見た時「この2個のバッテリーは何?」というのが気になりましたが、S:HEVでも同様に気になることがあります。AWD制御の考え方が変わっていることです。原則フルタイム4WDではなくなっています。
- 「そこで新型クロストレックでは、AWDを必要としない走行条件下では、カップリングのクラッチを解放し損失低減を図った」(スバル技報2024)より。
- これだと機械式4WDにこだわる理由は...あんなに頑張ってギア構造作ったのに...? ここには疑問を感じています。
最後に
- 久しぶりに車関係のレポート書きました。変わった車が出てくると気になるものですよね。また何か面白い仕掛けを見つけたら調べてみたいと思います。
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Notes
- なので変速の仕組みや考え方はPHEVのレポートを参照下さい。
- しかしMulti stage shift deviceという名前で、出力に4速ATを付けているモデルもありますね。
- ストイキの燃料/空気比率がλ=1で、λ=2は空気が倍。
- NOxトラップを復活させるためにストイキでの運転が必要。
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